コラム
2026/09/20

交通事故の高次脳機能障害とは?等級認定基準と裁判例を弁護士が解説

高次脳機能障害とは、交通事故で頭部を負傷し、記憶力や注意力の低下、性格の変化などが残ってしまう後遺症です。外見からは分かりにくいために見落とされやすく、適正な等級認定を受けられないケースも少なくありません。本稿では、高次脳機能障害の等級認定基準と、認定が争われた裁判例を踏まえて、弁護士が解説します。

「高次脳機能障害」とは

脳外傷による高次脳機能障害とは、交通事故等により脳に損傷を受けた被害者において、回復過程で生じる記憶障害・注意障害・遂行機能障害といった認知障害や人格変化等の症状が治療後も残存し、就労や日常生活が制限される状態をいい、器質性精神障害の一種とされています。

高次脳機能障害の自賠責保険における等級認定基準

高次脳機能障害は、症状の程度や介護・就労制限の状況に応じて、自動車損害賠償保障法施行令の別表第一・別表第二の各等級に区分されます。

別表第一第1級1号は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」、第2級1号は「随時介護を要するもの」とされ、いずれも日常生活動作に介護を要する重度の状態が該当します。

別表第二(国土交通省・後遺障害等級表参照)では、終身労務に服することができない場合は第3級3号、特に軽易な労務以外に服することができない場合は第5級2号、軽易な労務以外に服することができない場合は第7級4号、就労可能であるものの効率性や持続性に障害が残る場合は第9級10号に区分されます。

高次脳機能障害の等級認定で重視される医学的資料

自賠責保険における審査では、脳外傷による器質的損傷の存在を客観的に立証する医学的資料が重視されます。特に重要とされるのが次の3点です。

①事故により頭部に脳損傷を生じさせる程度の大きな外力が加わったと合理的に推認できること。②受傷直後の意識障害の程度・期間(JCS3桁またはGCS8点以下の意識障害が6時間以上、あるいは軽度の意識障害・健忘が1週間以上継続した場合等に残存しやすいとされます)。③CT・MRI画像における脳挫傷や外傷性脳内出血、びまん性軸索損傷等の急性期所見、または慢性期の脳萎縮・脳室拡大の進行が確認できること。

これらに加え、記憶力検査(WAIS-III知能検査、リバーミード行動記憶検査等)の神経心理学的検査結果や、家族が作成する日常生活状況報告集も、認定の重要な資料となります。

等級認定が争われた裁判例

高次脳機能障害の有無や等級認定をめぐっては、次のような裁判例があります。

東京地方裁判所平成21年4月16日判決(平成17年(ワ)第26242号)
交通事故により頭蓋骨骨折や急性硬膜下血腫等の傷害を負った被害者について、医師の意見書やMRI所見等を根拠に高次脳機能障害の発症を認め、労働能力喪失率67%(後遺障害等級6級相当)を認定しました。事故から長期間が経過している場合であっても、受傷時の傷害の重篤性や画像所見、医師の意見書に基づいて因果関係を肯定した点に意義があります。

横浜地方裁判所令和3年4月20日判決(平成29年(ワ)第4190号)
高次脳機能障害(7級4号相当)の残存を主張した事案について、裁判所は「頭部画像上、脳室拡大・脳萎縮のいずれも認められず、高次脳機能障害の存在を積極的に裏付ける程度の意識障害があったともいえず、症状の経過も一般的経過と整合しない」として、症状の残存を否定しました。

静岡地方裁判所平成30年10月12日判決(平成26年(ワ)第381号)
追突事故による高次脳機能障害等を主張した事案について、裁判所は「受傷時、意識障害は認められず、画像上の異常所見はなく、典型的な症状も残存していない」として発症を否定し、残存症状は14級の神経症状にとどまると判断しました。

これらの裁判例からは、①意識障害の有無・程度、②画像所見の有無、③典型的な認知症状の残存という3要素が、高次脳機能障害の認定において特に重視されていることが分かります。

高次脳機能障害の逸失利益・慰謝料算定のポイント

逸失利益の算定にあたっては、後遺障害等級に対応する基準労働能力喪失率(1〜3級は100%、5級は79%、7級は56%、9級は35%等)が指標となります。もっとも、高次脳機能障害は「意思疎通能力」「問題解決能力」「作業負荷に対する持続力・持久力」「社会行動能力」の4領域における支障が問題となるため、実際の職種や復職後の減収状況等を踏まえた個別の判断が必要です。

また、重度の感情コントロール障害や易怒性等により家族による介護・監視の負担が極めて大きい場合には、被害者本人の慰謝料増額要素となるほか、近親者固有の慰謝料が別途認められることもあります。

弁護士に依頼するメリット

高次脳機能障害は、急性期に他部位の怪我に目を奪われたり、被害者本人の自己洞察力の低下により見落とされやすいという特徴があります。早期に弁護士に相談することで、必要な検査の手配や医師への適切な意見書作成依頼、日常生活状況の記録方法について助言を受けることができます。

また、相手方任意保険会社に手続を任せる「事前認定」ではなく、被害者側で主導して自賠責保険会社へ直接申請する「被害者請求」(自賠法16条1項)を選択することで、漏れのない立証資料を提出することが可能になります。非該当や想定より低い等級と認定された場合も、画像の再読影意見書や追加の神経心理学的検査、具体的なエピソードを盛り込んだ生活状況報告書の補強など、新たな医証を揃えて異議申立てを行うことができます。

東大阪市・八尾市で交通事故の高次脳機能障害にお困りの方へ

高次脳機能障害は見落とされやすく、適正な等級認定を受けられるかどうかで賠償額が大きく変わります。当事務所の交通事故の基礎知識ページでも後遺障害等級認定の基本をご案内しておりますが、具体的な対応は事案ごとに異なります。東大阪市・八尾市で交通事故による高次脳機能障害にお困りの方は、お一人で悩まず、お早めに当事務所までご相談ください。

まとめ

高次脳機能障害の等級認定では、意識障害の有無・程度、画像所見、典型的な認知症状の残存という3要素が重視されます。適正な等級認定と賠償額の獲得のためには、早期に弁護士へ相談し、被害者請求による立証資料の充実を図ることが重要です。お困りの際は、早めに弁護士へご相談ください。

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